夜間頻尿について
- 2022年6月12日
- 泌尿器疾患
夜間頻尿とは、夜間に排尿のために一回以上起きなければならない状態を言います。夜間頻尿の症状のある方は、若年者で10-30%、高齢者で40-80%の割合でいると言われています。排尿のために夜間覚醒することが、必ずしも日常生活の支障となっていない患者様も少なくないかもしれませんが、2回以上の夜間頻尿がQOL (quality of life)の低下につながり、夜間の排尿回数が増加するほどQOLに支障をきたすと言われています。ある疫学調査では、2回あるいは3回以上の夜間頻尿があると、転倒や骨折のリスクが高くなり、死亡率も増加することが報告されています。一晩に3回以上の夜間頻尿があると、夜間頻尿のない場合と比べて、転倒のリスクが1.28倍になるという報告があります。転倒は大腿骨頸部骨折や頭部外傷の原因となり、偶発的死亡につながる可能性があり、夜間頻尿が死亡率とも関連することが指摘されています。ある報告では、2回以上の夜間頻尿がある高齢者では、1回以下の方と比べて、死亡率が1.98倍であったとされています。
夜間頻尿の主な原因として、①夜間の尿量が多い(夜間多尿)、②膀胱の中に適正な量の尿を溜めることができない(膀胱蓄尿障害)、③睡眠障害の3つが挙げられます。それに加えて、高血圧、心臓機能の低下などの循環器疾患との関連も指摘されており、これらの要因が単一であるいは複数で関与していると考えられています。
泌尿器科専門医は、患者さんから病歴や症状を詳細に問診し、診察や必要に応じた検査を行い、夜間頻尿の原因を探ります。必要に応じて、ご自宅で患者様ご自身に、排尿のたびに時刻や排尿量などを24時間記録する「排尿記録」をつけていただくことがあります。記載方法や必要物品(計量カップなど)は、クリニックでご案内いたします。
以上を踏まえ、考えられる原因に応じて、行動療法や生活指導、薬剤による治療など、患者様に合った治療法をご提案します。